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HASTA LA VISTA BABY

『下流の宴』は中流階級についての話であった

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僕にとって116冊目となる小説『下流の宴』の感想になります。

 

『下流の宴』のあらすじ…

普通に教育を受けて、平穏な家庭で成長した主婦・由美子。しかし、その息子は中学校までの義務教育を修了しながら、定職に就かず、格差社会に悩んでいる。

下流の宴 - Wikipedia

本記事の内容

・上流でもなく下流でもない中流階級のお話

・けっきょくみんな自分の信じていることを信じたい

上流でもなく下流でもない中流階級のお話

あらすじに書いてある通り、本作に登場する由美子という人物はいわゆる真っ当な教育を受け、何事もない平穏な家庭で生まれ育っています。

 

かといって超お金持ちというわけではないので、中流階級ということになりますね。

 

しかし、その息子・翔はなにごとも無気力で一般企業にはいって働きたいという思いはなく、一生アルバイトでもいいと思っている口だし、付き合っている女性はネットで知り合ったという。

 

平穏な家庭でうまれそだって、いわゆる「一般常識」を身につけている由美子は、この息子には耐えられないのです。

 

一生懸命勉強して大学に入って、一般企業に就職して(由美子が思う)一般常識を身につけた女性と婚約して子どもをもつという典型的な人生を息子に望んでいます。

 

僕は由美子が考えるような人生を歩みつつありました。

浪人をしたにせよ、一生懸命勉強して早稲田大学に入学し、希望通りではないにせよ一般企業に入社しているし(フリーター時代があったけど)、付き合っている女性も大卒で良識がある。

 

今はまったくそんなこと思っていないけど、正直勉強をがんばれないとか意味わからんとか思っていたし、総合商社や大手メガバンクにはまったく興味なかったけど、入社しようとがんばっていたのは大手企業ばかりでした。

 

しかし、気まぐれで始めたブログを通して「本当にいろいろな人生がある」ということを知って、しかもそれぞれがメチャクチャ面白い。

 

ブログに出会っていなければ退廃的な人生を送っていたり、何もせず自分のやりたいように生きている人生を、本作の由美子みたいにありもしない一般常識とやらに照らし合わせてその人たちを否定していたかもしれないのです。

 

「典型的な人生」を送っていない人はすべて下流であり、そこに親族が落ちていくことは断固拒否するという態度をとってしまう由美子の気持ちはわからないことはないが、そういう人生を歩めない人なんてたくさんいるし、歩まないことを積極的に選ぶ人だっている。

 

本質は「自分がどの階級に属しているかと考えることやその階級に属していない人を無理やり自分の階級に引き込もうとするのは無意味で、自分の選んだ人生に責任を持ち生き切ること」ではないかと思います。

けっきょくみんな自分の信じていることを信じたい

由美子の息子である翔が付き合っている女性は珠緒といって、由美子のあまりに受験至上主義的な言動に怒りを覚え、翔と一緒にいられるようにするため、医学部の受験を決めます。

 

しかし、受験勉強を続けていくうちに翔はその姿に引いてしまいます。

「そんなにガツガツしている姿、珠緒に似合っていない」といった考えを持ち始めます。

 

やはり、何でもそうですが一生懸命がんばると「プライド」が出てくるのです。

しかもそもそも翔をおもって始めたこの受験勉強ですので、いきなり「ガツガツしている女は苦手なんだ」といわれても戸惑ってしまいます。

 

珠緒のことは好きだけど、急にそんな変わられると困るという煮え切らない態度。

 

翔みたいな自由な生き方を否定するつもりではないけど、自分が思っていなかった人生を他人が歩むことをよく思わないという態度じたいは母・由美子と根底は同じです。

 

そして珠緒は医学部を受験し、合格することによって由美子が「常識的」と考えるような人生を送るのだろうと思うとおもしろい。

 

こういう状況をみて、僕は「他人の人生には介入せず、自分の信じた人生を生き切ることがベストだ」という考えを強くしました。