NOW UPDATING...

HASTA LA VISTA BABY

文学史上の事件『蹴りたい背中』は不器用な青春を描く

f:id:updateplan:20180915105335p:plain

僕にとって123冊目となる『蹴りたい背中』の感想です。

 

『蹴りたい背中』のあらすじ…

理科の授業で仲間外れにされたハツは、同じ班のにな川が読んでいる女性ファッション誌のモデル(オリチャン)に目がとまる。ハツは中学生のとき、隣町の無印良品でオリチャンに会ったことがあり、そのことを言うとにな川は興味を持つ。放課後彼の家に呼ばれ、そこでにな川がオリチャンの大ファンであると知る。後日ハツはにな川に頼まれ、オリチャンと会った無印良品へ向かう。そしてにな川の家で休憩する二人だったが、ハツはオリチャンのアイコラ(にな川作)を見つける。ハツは異様な気分になり、にな川を後ろから思い切り蹴り倒す。

その後、にな川が学校を4日間休む。不登校ではないかと言われるも、ハツはにな川の家にお見舞いに行く。実はにな川は徹夜でオリチャンのライブのチケットを取ったため、風邪を引いたのだった。にな川はチケットを4枚買っており、ハツは誰か呼んで一緒に行こうと誘われる。友人は絹代しかいないので、仕方なく絹代を誘って3人でライブに行く。絹代がハツに「にな川はいい彼氏なんじゃないか」「ハツはにな川のことが本当に好きなんだね」と言うが、ハツは「自分の気持ちはそうじゃない」と思っていた。

ライブから帰ると、バスはもう出ていなかった。仕方なくハツと絹代はにな川の家に泊まる。ハツはよく眠れず、ベランダでにな川と話をする。にな川が「オリチャンを一番遠くに感じた」と言ってハツの方を背にして寝転がると、ハツはにな川の背中を蹴ろうとする。指が当たったところでにな川が気づくが、ハツは知らないふりをする。

蹴りたい背中 - Wikipedia

 本記事の内容

・不器用な青春を描く

・たくさんの視点から語ることができる

不器用な青春を描く

僕はこの本を読み終えたとき「どういう感想を持つのがベストなのだろうか」と考えてしまいました。

けっして「他の人はどう感じているのかということをみて、それに合わせよう」という気持ちではなく、短い小説なのにすごく難解なのです。

 

難しい言葉が使われているという意味ではなく、解釈の仕方がとても難しい。

個人個人がそれぞれの感想を持つべきだと思いますので、僕が感じたことを書きます。

 

本作は高校生を主人公としていますが、一般的な青春小説ではありません。

校舎の裏に呼び出されてドキドキするような告白もありませんし、クラスのイケメンを取り合うものではありませんし、大好きな彼氏と花火大会♡なんてことはいっさいありません。

 

一般的な青春小説はいわゆる「陽キャラ」たちの青春小説で、本作は根暗でクラスのはじき者たちの小説なのです。

 

もちろんいわゆる「陰キャラ」が登場人物でも甘酸っぱい青春小説に仕立て上げることはできますが、そういった陳腐なものにはならなかったので「文学史上の事件」と呼ばれるようになったのだと思います。

 

登場人物のひとりである「にな川」はオリチャンというファッション誌のモデルのファンで、主人公のハツが「オリチャンに会ったことがある」とにな川に話しかけた時から物語は動き始めます。

 

オリチャンに会ったことがあるということで、にな川の家に招待されます。

にな川の部屋には大切に保管された「オリチャン関連グッズ」がたくさんありました。

 

そこにはオリチャンのアイコラがあり、ハツは悪寒を感じます。

さらに、にな川はハツのことを完全に無視してオリチャンが出演しているラジオを聴いています。

イヤホンは片耳だけだったので、ハツが理由を聞いてみると「このほうがささやかれている気がするから」とのこと。

 

ここでハツには「にな川を思いっきり蹴りたい」という感情がわきおこります。

そして実際ににな川の背中を蹴ってしまうんですねぇ。

 

でも単純に、にな川を「気持ち悪い」と思って蹴ったのではない。

「蹴ってしまいたくなった」といった方が正しいかもしれません。

 

にな川の痛がる姿がみてみたい、という欲望から出た行動なのです。

表面的にみればただのイジメですが、そうともいえない。

 

ストレートな愛情ではなく、もっと強い感情がハツの中で沸き起こったのだと思います。

物語の最後までにな川はオリチャンに夢中でした。それはもう危険なほどに。

 

そんな様子をみて「女子高生」であるハツはその感情をうまく表現できない。

けどこれが「高校生」のリアルなのではないでしょうか。

 

大人になってから高校時代を思い出して、小説を書こうとするとありきたりな青春小説になってしまいがちですが、この作品を書いたとき著者はまだ「19歳」でした。

 

つい最近まで女子高生だったので、その時の感情表現の仕方はまだ残っていたのだと思います。

それをうまく言語化してひとつの作品にしあげているという点がものすごいのです。

 

ティーンエイジャーの感情を緻密にティーンエイジャーらしからぬ言葉で表現しているというものすごい小説なので一読してみてはいかがでしょうか。

たくさんの視点から語ることができる

以上のように僕なりの解釈の仕方を書きましたが、読む人にとってはまったく違う感想を持つような小説です。

ためしにAmazonレビューや他のブログ記事を読んでみましたが、本当にこの小説の感想は千差万別です。

 

それぞれがそれぞれの感想をもって語ることができるという点でも素晴らしい小説だと思いますね。

 

『蹴りたい背中』を読んで自分なりの感想をもってみるのは面白いですよ。